カンさんのアート館の設立にあたって

●設立趣旨

侃司が活躍をはじめた昭和30年代後半は、関西グラフィックアート界が最も輝いた時代で、侃司の他にも多数の才能が開花しました。しかし当時はまだ“イラストレーション”という分野に対する一般からの評価は決して高いとは言えず、多くの作品は“印刷原稿”として消費され、貴重な原画や資料はほとんど残されていません。本サイトは侃司の功績はもちろんのこと、彼の作品を通して“イラストレーション”及び“グラフィックアート”の持つ文化的価値と「面白さ」「楽しさ」を、少しでも多くの方々に感じていただきたいという願いから起ち上がりました。また、近年長引く景気低迷の中で広告製作等の現場では“安さ”“早さ”“手軽さ”ばかりがクリエイターたちに求められるようになり、独自の作風を持つ“一芸に秀でた才能”を登用し、次世代を育てる習慣が損なわれてきています。そのため、“アーティスティック”な感性を持つ人々の誕生と成長が妨げられ、関西の広告宣伝業界は「人材育成」のできない業界となり「もう元には戻せないだろう。」との声さえ聞かれるようになりました。本サイトはただ古き良き時代を懐かしむためだけでなく、侃司の作品を通して、広告宣伝・出版業界とそれに携わる次世代のため、そして同業界の明るい未来の創造のため、少しでもお役にたてれば幸いと考えております。

●著作権についての当館の考え方

これはデリケートな問題なのであります。まず、著作権が発生するのは何なのかと言いますと、それは著作物そのものでありまして、作風や技術には著作権は(基本的には)発生しません。著作権について先進的なアメリカでは近年、技術についても著作権というプロテクトをかけるべきではないか?という議論が行われたようですが、頓挫しました。と、言うのも…例えば野球というスポーツの現場では、変化球という技術が使われますね。毎夜行われるプロ野球のゲームにおいて、どのチームのどの投手がどんな変化球を何球投げたかを計測し、精算する…。球種によっては、高い変化球と、安い変化球が出てくるまもしれませんね。監督や捕手はその投手のふところ具合を考慮しながらサインを出さなくてはならなくなります。野球は台なしです。音楽にしても演奏技術に著作権というプロテクトがかかってしまうと気軽に演奏できなくなりますね。だから、やめたようです。ですから「公に発表されたカンさんの絵そのもの」を無断盗用しなければ、著作権侵害にはなりません。商標登録とか意匠とか…いわゆる「まるC」とか「まるR」とかが付いて、特定のキャラクターや名称が、その人独自のモノと法的に認められれば、公に発表する作品・商品にその名称や、マネして描いたものを無断で使用することはできませんが、カンさんの作風をマネして絵を描くこと自体は、著作権侵害にはあたらないので心配しなくていいのです。むしろ、マネして描いていただいて、若い方々には、そこから色々と学んでほしいと思います。そこで、カンさんの絵の著作権についてですが、著作権自体は、描いた本人である佐々木侃司…今となっては遺族にあるということになるのでしょうが、ことは簡単ではないのです。著作権を持っていても、全て自由にしていいわけではないのです。発表されたイラストの多くは「佐々木侃司画集」として発表されたものではなく「何かの挿し絵」として世に出ているわけです。出版権や所有権は、著作権とはまた別であります。小説や音楽作品などの出版物は、それを出版する権利は出版者にありますから、著作者自身がそれを勝手に自費出版したりすることはできないのです。又、出版物に関しては、それを出版するという責務を負担してもらうかわりに著作権そのものも出版者に譲渡するケースもありまして、まことに複雑なのであります。しかも、著作権法を含めて、法律というものは、実はパーフェクトではありません。解釈の違いというのを生み出し、それが数々の誤解や間違い、民事裁判などを引き起こします。当館ではしばらく、基本に立ち返った(開き直った?)スタンスでいたいと思います。全ての法律は、この社会で暮らす人々、さらには動植物の生きる権利と、それぞれの幸福を守るためににあるもの・人の心と心を繋ぐためのものだと思います。決して、他者を不幸に陥れるためのものではないと信じていきたいと考えています。著作権法という法律もそうであるべきだと考えます。「著作権を守る者として」はやはり、意図的に悪質な行為をなさる方がチラホラおられることは残念ながら事実でありますので、必要な措置・手続きは少しづつ進めて行きたいとは思いますが、まず大切にしたいのは、カンさんの世界観を愛してくださいました皆さんのお気持ちです。数々の仕事にカンさんを選んでいただいた作家さんたち、クライアントさんのお気持ちや想い出を大切に考えることが、第一です。そしてこれまでのカンさんのキャリアやお友達を傷つけるような行為はしないように心掛けたいと考えています。

●kan-artの[art]って何?

「kan-art house」という名前が生まれたのは、1980年代の初頭であります。サントリーを退社し、フリーランサーのイラストレーターとなった時「何ぞ屋号があった方がエぇかナ」ということで、思い付いたのがコレ。あまり深く考えずにつけられた名前です。しかし実は「ART」という言葉には、カンさんなりの「こだわり」が隠されております。当時、大阪芸大で行われた、とあるイベントに「ART & IDEA(技と知恵)」というサブタイトルがつけらておりました。カンさんはこの言葉を非常に気に入っていたようでした。どうも、そこから拝借してきた言葉のようです。「ART 」という言葉は、一般的には「芸術」と訳されることが多いのですが、その他にも「技工」とか「熟練した技術」という意味もあります。つまり「kan-art house」の「art」は「芸術」ではなく「技(わざ)」を表しておるのです。カンさんがイラストレーターとしての仕事は「絵を描くという技によって、依頼主の要望に応えること」或いは「誰かをハッピーにすること」でありまして、決して「作品発表」ではなかったのです。「あくまで受注産業であるゾ」という言葉には「芸術家」と呼ばれることに、照れくささを感じていたこともあるでしょうし、何かしらのヤッカミやヒガミもあったかもしれません。ともかく、それが佐々木侃司というイラストレーターの生き方でありました。ですから「kan-art house」を日本語に置き換える場合は「侃“芸”館」ではなく「「侃“技”館」ということになります。

●[カンさんのアート館]の歩み/只今準備中です。

●編集方針と表示・閲覧環境について/只今準備中です。

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